あくびは脳を冷やすための仕組み
なかなか興味深い話を見つけましたので共有します。
その昔、あくびは脳の酸素不足から起きると言われていましたが、現在ではそうではないとする説が大変有力になっています。
1. 「酸素不足説」は実験で否定されている
- 1987年の古典的実験(Robert R. Provineら):被験者に100%酸素を吸わせたり、CO₂濃度を3〜5%に上げたり、運動で呼吸を倍増させたりしても、あくびの頻度はほとんど変わらなかった。
論文:Yawning: No effect of 3–5% CO₂, 100% O₂, and exercise(Behavioral and Neural Biology, 1987)
この結果以降、「酸素・CO₂調整説」はほぼ否定されています。医療サイトやレビューでも「神話」として扱われるのが一般的です。
2. 「脳を冷やす仕組み」説は近年有力
近年有力なのは、「あくびは脳を冷やすための仕組み」という説で、複数の研究で支持されています。
主な根拠となる研究(Andrew C. Gallupらが中心):
- 2007年:鼻呼吸や額の冷却で伝染性あくびが減ることを示し、脳冷却仮説を提唱。Yawning as a Brain Cooling Mechanism: Nasal Breathing and Forehead Cooling Diminish the Incidence of Contagious Yawning(Evolutionary Psychology)
- 2010年:ラットの脳温度を直接測定。あくびの直前に脳温が上昇し、直後に低下することを確認。Yawning and Stretching Predict Brain Temperature Changes in Rats (Frontiers in Evolutionary Neuroscience)
- 2013年:過去5年分の研究をまとめたレビュー。「脳冷却・体温調節説」の予測が繰り返し再現され、反証が出ていないと結論。The thermoregulatory theory of yawning: what we know from over 5 years of research (Frontiers in Neuroscience)
- 2014年:人間でも周囲温度が極端に高い・低いとあくびが減る「温度ウィンドウ」を確認。A thermal window for yawning in humans (Physiology & Behavior)
- 2017年:ラットで顔の表面温度が実際に下がることを熱画像で証明。Yawning reduces facial temperature in the high-yawning subline of Sprague-Dawley rats (BMC Neuroscience)
- 2019年:首(頸動脈)の温度操作であくび頻度が変わることを人間で確認。
簡単にまとめると、大きく口を開け、顔・顎の筋肉を動かし、深く息を吸うことで頭部の血流が変化し、熱を持った血液を排出し、涼しい空気を取り入れることで脳を冷却する、というものです。
3. 注意点・補足
- 「有力な説」であり、完全に決着したわけではない:あくびの機能については他にも「覚醒状態の切り替え」「脳脊髄液の循環」など複数の仮説が並行して研究されています。ただし酸素不足説よりははるかにエビデンスが豊富です。
- 眠い時・退屈な時・緊張が緩んだ時に出やすいのは、脳温の上昇や状態変化が起きやすいタイミングだから、という説明がこの説ではなされています。
- 「怠けているサインではない」というのも科学的な観点からは妥当です。