アルコールの適量はゼロ
お知らせ在宅訪問事務所
アルコールに関する認識は、ここ数年で「劇的」と言っていいほど変わりました。
以前は「百薬の長」や「適量なら体に良い」という説が一般的でしたが、最新の研究、特に脳への影響については、その考え方が否定されつつあります。
1. 「適量は健康に良い」は、実は「錯覚」だった?
かつての研究では「全く飲まない人」よりも「少し飲む人」の方が認知症リスクが低いというデータがありました。
しかし、最近の精密な解析(メンデルランダム化解析など)により、以下の事実が判明しています。
- 逆の因果関係: 「全く飲まない人」の中には、「元々体が弱くて飲めない人」や「すでに体調を崩して禁酒した人」が含まれていました。健康だから飲まないのではなく、不健康だから飲めない層と比較していたため、少量飲む人が健康に見えていただけ、という指摘です。
- 脳への影響に「安全な量」はない: 2025年などの最新の研究では、アルコール摂取量が増えるほど脳の容積が減り(脳萎縮)、認知症リスクが直線的に上昇することが示唆されています。
つまり、脳にとっては「少なければ少ないほど良い」というのが現在のスタンダードになりつつあります。
2. 2024年版「ランセット」委員会の見解
認知症の世界的権威である『ランセット』の委員会も、アルコールを「修正可能なリスク要因」として挙げています。
- 過度の飲酒(週に21ユニット以上)は、明らかな認知症のリスク要因とされています。
- ※21ユニット = 日本の「1単位(ビール中瓶1本、日本酒1合)」で換算すると、週に約10.5本分に相当します。
- ただし、この基準はあくまで「明らかなリスク」の境界線であり、最新の研究ではそれ以下の「中等量」でも脳に悪影響があるという報告が増えています。
3. アルコールが脳に悪影響を与えるメカニズム
アルコールは単に酔わせるだけでなく、身体的に以下の経路で認知症の遠因となります。
- 直接的な神経毒性: アルコールそのものや、分解過程で出るアセトアルデヒドが脳細胞を直接傷つけ、脳を萎縮させます。
- ビタミン欠乏: アルコール分解にビタミンB1(チアミン)を大量に消費するため、不足すると脳の記憶を司る部分が深刻なダメージを受けます(ウェルニッケ・コルサコフ症候群)。
- 睡眠の質の悪化: 寝酒は眠りを浅くし、前述した「脳の老廃物の洗浄(アミロイドβの排出)」を妨げます。
結論として
現在の医学界のトレンドは「アルコールに健康上のメリット(特に脳において)を期待すべきではない」という方向に大きく舵を切っています。
「お酒を飲むなら、健康のためではなく、リスクを承知の上で楽しむもの(嗜好品)」と割り切るのが、最新の予防医学的な考え方です。