芸術に関わることと老化の関係
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今日はオックスフォード大学出版局の学術誌、Innovation in Agingに掲載された研究論文をご紹介します。
芸術に関わることと老化の関係を明らかにしたという内容です。
https://academic.oup.com/innovateage/article/10/6/igag038/8669801
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームらによるこの論文の要約は以下の通りです。
【概要】
芸術や文化活動(美術館・博物館・図書館への訪問、絵画、音楽、工芸など)に定期的に参加することは、運動(身体活動)と同程度に、生物学的な老化の進行を遅らせる効果があることを世界で初めて科学的に証明した研究です。
1. 研究の背景と目的
近年、DNAの化学変化から生物学的な年齢を推定する「エピジェネティック・クロック(老化時計)」が開発され、健康寿命を延ばすライフスタイルの研究に用いられています。
しかし、運動の効果に関する研究は一部あるものの、「芸術・文化活動(ACEng)」が生物学的な老化に与える影響については、これまで一度も研究されていませんでした。
2. 研究方法
対象データ: 英国の代表的な大規模コホート調査(UK Household Longitudinal Study)に参加した成人3,556人のデータ(2010〜2012年)を分析。
指標: 7種類のエピジェネティック・クロック(PhenoAge、DunedinPACEなど、生物学的年齢や老化のペースを測定する指標)を使用。
分析手法: 人口統計学的要因、社会経済的状況、その他のライフスタイルなどの影響を調整し、統計的に強固な手法(重回帰・逆確率ウェイト法など)で分析。
3. 主な結果
老化のペースが鈍化: 芸術・文化活動への参加、および運動(身体活動)は、主要な老化時計において、生物学的な老化の進行を遅らせる明確な関連性が認められました。
運動と同等の効果: 芸術活動がもたらす老化防止の「効果の大きさ(影響度)」は、運動を行った場合とほぼ同程度でした。
例えば、数ヶ月に1回未満しか芸術活動をしない人と比べ、年に数回行う人は2%、毎月行う人は3%、毎週行う人は4%老化のペースが遅いという結果が出ています。
別の老化時計の測定では、毎週芸術活動を行う人は、ほとんど行わない人に比べて生物学的年齢が平均1年若く、毎週運動する人の差(約0.5年若い)を上回る結果も見られました。
頻度や多様性が重要: 単に活動を行うだけでなく、活動の「頻度」や「多様性(さまざまなジャンルの芸術に触れること)」が高いほど、より高い効果が確認されました。
40代以上に顕著: この傾向は、特に40歳以上の中高年層においてより強く見られました。
4. 結論と社会的意義
本研究は、芸術や文化活動への参加が、生物学的レベルで健康的な老化(ヘルシー・エイジング)に寄与するという初の証拠を提示しました。
研究チームは、この知見が「健康のために運動をしましょう」という従来の公衆衛生戦略だけでなく、「個人の健康行動や医療の枠組みに芸術・文化活動を組み込むこと(社会的処方や芸術療法など)」を科学的に後押しする重要な根拠になると結論づけています。